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大阪地方裁判所 昭和59年(わ)608号 判決 1984年7月26日

裁判所書記官

東森隆一

本籍

大阪市城東区新喜多一丁目三〇番地

住居

大阪府寝屋川市八幡台六番一七号

型枠工事業

冨岡勇

昭和六年九月一八日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官宇田川力雄出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年六月及び罰金四五〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、大阪府東大阪市稲田一〇五四番地において、冨岡工務店の名称で、型枠工事業を営んでいた者であるが、自己の所得税を免れようと企て、架空の外注費及び労務費を計上するなどの方法により所得の一部を秘匿したうえ、

第一  昭和五五年分の所得金額が一億一一四七万三四三五円(別紙(一)総所得金額計算書及び修正損益計算書参照)であったのにかかわらず、昭和五六年三月一六日、同市永和二丁目三番八号所在の所轄東大阪税務署において、同税務署長に対し、昭和五五年分の所得金額が一〇三八万一三一五円で、これに対する所得税額が二一九万八〇〇〇円(この税額には算定上の誤りがある)である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額六七九九万八七〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)と右申告にかかる所得金額に対する所得税額との差額六五七八万三六〇〇円を免れ

第二  昭和五六年分の所得金額が一億一〇五二万〇一八五円(別紙(二)総所得金額計算書及び修正損益計算書参照)であったのにかかわらず、昭和五七年三月一五日、前記東大阪税務署において、同税務署長に対し、昭和五六年分の所得金額が一二六三万四三八〇円(この金額には算定上の誤りがある)で、これに対する所得税額が三四一万七四〇〇円(この税額には算定上の誤りがある)である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額六七〇八万九四〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)と右申告にかかる所得金額に対する税額との差額六三六四万七四〇〇円を免れ

第三  昭和五七年分の所得金額が九六三〇万三三六九円(別紙(三)総所得金額計算書及び修正損益計算書参照)であったのにかかわらず、昭和五八年三月一五日、前記東大阪税務署において、同税務署長に対し、昭和五七年分の所得金額が一八七〇万二五二二円で、これに対する所得税額が六〇三万六〇〇〇円(この税額には算定上の誤りがある)である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額五六四八万一六〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)と右申告にかかる所得金額に対する税額との差額五〇四一万三六〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書

一  被告人に対する収税官吏の各質問てん末書

一  山田保代、富岡広子及び佐藤進の検察官に対する各供述調書

一  山本武夫、小林正利、桑原一弘、松川衛、井藤茂、安尾豊正、山田保代(三通)、富岡広子(六通)及び佐藤進(三通)に対する収税官吏の質問てん末書

一  収税官吏作成の各査察官調書

一  押収してあるノート九冊(昭和五九年押第四一五号の一)、昭和五五年度総勘定元帳一綴(同号の二)、昭和五六年度総勘定元帳一綴(同号の三)及び昭和五七年度総勘定元帳一綴(同号の四)

一  東大阪税務署長作成の証明書三通(所得税確定申告書写し添付のもの)

一  東大阪税務署長作成の証明書(青色申告承諾取消しに関するもの)

一  収税官吏作成の脱税額計算書三通

(法令の適用)

被告人の判示第一の所為は、行為時においては、昭和五六年法律第五四号による改正前の所得税法二三八条一項に、裁判時においては、右改正後の所得税法二三八条一項に該当するが、右は犯罪後の法令により刑の変更があったときにあたるから、刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、判示第二及び第三の各所為は、いずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、右各罪につきいずれも所定の懲役と罰金を併科し、かつ、情状により所得税法二三八条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により刑及び犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年六月及び罰金四五〇〇万円に処し、同法一八条により右罰金を完納することができないときは金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 野間洋之助)

別紙(一) 総所得金額計算書

自 昭和55年1月1日

至 昭和55年12月31日

<省略>

別紙(二) 総所得金額計算書

自 昭和56年1月1日

至 昭和56年12月31日

<省略>

別紙(三) 総所得金額計算書

自 昭和57年1月1日

至 昭和57年12月31日

<省略>

別紙(四) 税額計算書

<省略>

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